2016年5月31日火曜日

9R-59D(3号機)

 デジタル周波数カウンターを装着した9R-59D(3号機)

3台あった59D(S)ですが、そのうち9R-59DS(1号機)のレストアを今年春の大型連休で行い先日キョウトAA347さんのもとへ送り出しました。勢いのある今のうちにと残り2台のうち59D(3号機)の整備を一昨日から始めました。

基本的には動作品でしたがいくつか問題があり、そのうち1つはAF GAINを最小にしても音が絞り切れないという現象でした。

AF段のコンデンサー、抵抗の劣化を疑い交換したものの依然音が絞りきれません。基本に立ち返り思いついたのがAF GAINの500kΩAのボリュームの異常。

59DSの1号機ではAFボリュームのガリがひどく早い段階で交換していましたが、この3号機はガリもなくスムーズに回るので油断していました。交換してみるときっちりと音が絞りきれるようになりました。残留抵抗が1.2kΩありそれが原因だったのでした。

次に行ったのが周波数表示をデジタルにすること。毎日拝見しているTakinxさんのブログで今年3月から4月にかけて「ノイズの多い中華カウンター」の記事を目にしました。結論として30dB程度S/Nが悪くなり、電源をはずすと静かになるとのこと。
 ノイズの多い2000円程度の中華カウンター

9R-59Dではシールドがしっかりしており、また現在使用している外部アンテナも自宅の屋根の上、地上高10mとカウンターから十分に距離がとれることから2000円の投資を行いました。
 カソードフォロワのバッファーアンプ

カウンターの取り出しには1号機ではJA9TTT氏の2SK241と2SC1923の2石のバッファーアンプを使用しましたが、今回は先人のお知恵を拝借しV3(ECC85;6AQ8)の空いている3極部を使用したカソードフォロワのバッファーを組み込みました(ECC85、9R-59Dで検索すると上位に表示される海外のサイト)。
プレートの150Ωは手持ちの関係で180Ω(この抵抗だけ1/4Wですが入手できれば1/2Wに交換予定)にしています。0.01uFは足の長さにより500V、1kVを使い分けています。3-7間の10pFは耐圧50V。
背面のカウンター出力端子
 
本体からの取り出しにはアンテナ端子のアース側を撤去、そこにBNCJを配置しました。カウンターの電源を入れて本体に接続してもS/Nの悪化は認めません。Aバンドの0.55MHzからDバンドの30MHz+αまできっちりとカウントしてくれます。
 
現在単三6本のバッテリー駆動で毎日1-3時間程度の使用で3週間経過しましたがまだ電池の交換は必要ありません。いつまで電池がもつかは今後報告さていただきます。
 

2016年5月8日日曜日

9R-59DSを整備しました

写真は9R-59DSと取り外したパーツ類

先日のブログで老朽化した59D(S)3台が手元にある話をしました。今年の大型連休でこのうち1台を若返らせるため交換可能な電子部品(コンデンサー、抵抗)を入れ替える作業を行いました。

現存する真空管式受信機の大半は製造から半世紀以上が過ぎ、その中で使用されているパーツも劣化が進行し動作すらしないものや、動作はするものの製造当時の性能を発揮できないものが多く見られます。キョウトAA347さんから里帰りした59DSも「なんとなく調子が良くない、元気がない」と、まさに初老の私のような状態(笑)。

電子機器の電解コンデンサーなど寿命の短いパーツなどを予防保守的(本来保守とは性能を保つために行うもので、予防保守とは不自然な言葉ですが・・・)に交換することで設計段階の性能を維持することをリキャップと呼ぶようで、これを行ってみることにしました。

9R-59DS整備前
 
セラミックコンデンサーや抵抗はあまり劣化がないとされますが今回はこれも全て交換します。取り外したあとそれぞれのパーツの値を測定していきます。AF基盤、IF基盤、高周波増幅回路、局部発振回路、コイルパックのBバンド、Cバンドのパッティングコンデンサーも全て交換しました。

電源ラインは各部の電圧が問題ないので今回は手を付けずにおきます。問題はコイルパックのDバンド局部発振コイル。これまでDバンドのトラッキングがうまく取れないといった問題があり(13MHzは合うものの26MHzが合わない)、コイル二次側のトリマーとパラに入っているコンデンサーがあやしいと狙いをつけていました。

ところがこのコンデンサー、コイルパックをシャーシから取りはずさないと交換どころかその顔を拝むことすら出来ません。四苦八苦しながらコイルパックを取り外しようやく本丸にご対面です。

Dバンド局部発振コイルとコンデンサー(交換前)
取り外したコイルパック(コンデンサーは交換済み)

 
 
ちなみにDバンドの局発コイルとパラに入るコンデンサーはセラミックの7pFで温度補償は緑(-330ppm/℃)。同じものは入手出来ずとりあえず温度補償無しのセラミック3pFに交換(あとで容量が足りない場合はさらにパラに追加で調整できるように少なめで)。
 
Aバンド高周波増幅コイルとパラに入るコンデンサー
 
Aバンドの高周波コイルの一次側に入る50pFのコンデンサーも51pFのシルバードマイカに交換しました(500pF、510pFではありません)。

セラミックコンデンサーはおおよそ10%程度の変化ですが、それ以外のコンデンサー(マイカも含め)では大きく値が違っているものが多く認められました。抵抗についても10%以上の変化(たいていは増加)しているもがもいくつかありました。

これらの一つ一つのパーツの差が積み重なり、回路の多くで動作点がずれて増幅率に影響し製造当時の性能が発揮できず「なんとなく調子が良くない」状態だったのでしょう。リキャップ後は感度も良くなりNRD-545と比較しても見劣りしません。スピーカーから流れる音も見違えるように豊かになりました。

問題のDバンドは3pFだけだと局発は13-26MHzと調整範囲にはいるものアンテナコイル、高周波コイルとの同調が取れず感度ががた落ちです。最終的に4pFを追加して設計通りのトータル7pFとしてトラッキングが取れるようになりました。
9R-59DS整備後
 
これらの交換が全て終わり、調整、その他整備が済んだのは5月7日の15時ころ。5月7日16時からCOLさん宅でミニペディ(受信会)を予定していて何とかそれに間に合わせました。

ミニペディではCOLさんのNRD-545と強力な局を中心に比較しましたが全く引けをとりません。10年前のミニペディの際には惨敗だったのがうそのようでした。

若返った9R-59DSで現在17705kHzのインドからの中国向け中国語放送のあやしげな音楽を聞きながらこの原稿を書いています。