2020年6月10日水曜日

RD-9810とRD-9830の特性を比較してみた

図1:ナショナルのアンテナカップラーRD-9810(上)と
プリセレクティブアンテナカップラーRD-9830(下)

前回、前々回とナショナルのRD-9810、RD-9830について紹介してきました。
今回はこのアンテナカップラー(RD-9810)とプリセレクティブアンテナカップラー(RD-9830)の中波帯の特性を測定し、測定結果からいろいろと考察してみようと思います。

【方法】
(1)単一信号による特性評価
特性の測定には中華製のDDS信号発生器(Kuman FY6600)→ATT(-60dB)→試験機(RD-9810/RD-9830/自作プリセレ)→Perseusと接続します。
 RD-9810/RD-9830への接続は図2のようにワニ口グリップのケーブルを用いて行いました(自作プリセレについては両端BNCの3D-2Vケーブルで接続)。
図2:RD-9810への接続(ワニ口クリップ)
 
Perseusの帯域幅を1600kHzとして中心周波数を1100kHzにセットします。DDSにて1100kHzを発信させ、マッチングスイッチを選択しPerseusで信号強度が最強となるようにチューニングダイアルを合わせます。次にDDSにて500-1700kHzをスイープしPerseusをM Holdとして記録していきます。 
 
なおDDSのスイープの出力レベルが調整できない(やり方がわからない?)ため、外付けの減衰器でレベル調整を行っています。
 
それぞれの機種、それぞれのマッチングで中心周波数の1100kHzと±100kHz離調(1000kHz、1200kHz)、±500kHz離調(600kHz、1600kHz)でのメーターの値を読み取りました。
またRD-9830のゲインはHighに回し切った状態で測定しています。

(2)実際の放送波を受信しての特性比較
地上高10mのALA1530LNPを3D-2V約20mで室内に引き込み、それを2分配します。2分配したケーブルをさらに4分配しそのうちの1本をPerseus直結、RD-9810、RD-9830とつなぎ変えて中心周波数1098kHz、帯域1600kHz幅で受信し波形を保存しました。
 
【結果】
以下図3~図5に単信号特性の測定結果についてPerseusの生画像の一例を示します。表1ではPerseusから読み取った値を一覧として表示しました。
図3:RD-9810の特性
マッチングは上段はDirect、下段はA
図4:RD-9830の特性
マッチングは上段はDirect、下段はA
図5:自作プリセレクターの特性
上段Direct下段 0.42-1.3MHz帯 
表1:RD-9810、RD-9830入出力レベル一覧
 

表1はPerseusでの測定値をそのまま示してあります。このためそれぞれの機種の特性が読みにくくなっているため、入力レベル(自作プリセレクターのDirectの信号レベル)からの利得差を表示するグラフを作成しました(図6、図7)。
 
図6:RD-9810特性
 
 RD-9810のDirectでは若干のロス(-2.3~-2.8dB)がありますが周波数特性は概ねフラットでした。信号強度はマッチングB、CでDirectを少し上回りますが、入力レベルを超えることはありませんでした。
中心周波数前後100kHzの特性はブロードですが500kHz離れるとある程度は減衰されます。
なおRD-9810のマッチングDは同調点がはっきりせず計測を省いてあります。
 
図7:RD-9830特性
 
RD9830のDirectはかなりのロスがあり、低い周波数でロスが大きくなっています(600kHzで-22dB、1600kHzで-13.8dB)。
中心周波数での信号強度は最も弱いAでも+11.8dB、最も強いDでは+25.6dBとなりプリアンプの効果が見られます。
また中心周波数±100kHz離調での減衰が大きく、Aでは-100kHzで16.1dB、+100kHzで13.1dBもの減衰が見られました。
 
 図8:ALA1530LNPを8分配(2分配×8分配)しそれぞれ得られた波形
上段は分配器から直結、中段RD-9810 A、下段RD-9830 A 

信号源としてALA1530LNPを使用した場合、RD-9810では500kHz以下、1600kHz以上ではのノイズレベルが下がり非常にすっきりした印象です。これに対してRD-9830では500kHz以下では相互変調波と思える波形が見られ、1600kHz以上ではノイズレベルの上昇を認めました。

【考察】
図6、図7のRD-9810、RD-9830の特性図でまず気になるのはDirectでの損失です。RD-9810で約2-3dB、RD-9830では13.8-22dBもの損失が見られました。
 
RD-9810の損失については図2のように50Ωケーブルからワニ口で接続しており、マッチングをとることによってロスは若干改善されること、また周波数に依存せずフラットな特性であることから、入出力の接続での損失が疑われます。
 
ところがRD-9830では単に接続の問題では説明できない大きなロスが生じています。そこでRD-9830の内部を確認してみるとDirectのポジションでも入力と出力は直結にはなっておらずRCで構成された回路が介入しているのがわかりました(図9)。周波特性がフラットではないことなどからもこのRC回路により損失が生じているものと考えられました。なおRC回路のプリントパターンの確認ができず詳細は不明です。
図9:RD-9830内部
緑の楕円内に抵抗とコンデンサーがあり、入力(黄色のワニ口)
からの青いラインが基板へと向かい、CRの回路を通り黄色のライン
でマッチングスイッチへと続きます。Directではここから青のライン
で出力側に向かいます。
 
次に目につくのは同調の鋭さ(Qの高さ)の違いです。その昔(40年以上前)20m程度のアンテナをRD-9810経由でプロシード2800に接続して使った時には同調点も取りづらく、思ったほどのゲインもなくてとその効果を実感できなくて、数回使った後はほとんど出番がありませんでした。
 
ただし数m程度の短いアンテナを9R-59DSに接続した際には効果が実感されたこともありローインピーダンスの受信機にはそれなりの効果があったのかもしれませんが、それでも測定結果からは同調のブロードさが明らかとなりました。
 
その点RD-9830は前後100kHzで目立って信号が強くなるため(しかも入力レベルを大幅に上回って)、40年以上前に購入した時ももっぱらこの機種を使っていました。今回の検証でもその特性が示されており、特に同調点では入力レベルから11.8-25.6dBの利得が得られていました。
 
しかしそのRD-9830も図8に示すように多信号特性に問題が見られます。図8では一番利得の低いマッチングAでも500kHz以下で、利得の高いCでは1600kHz以上でも相互変調波が観測されました。
 
RD-9810では相互変調波の発生もなく500kHz以下、1600kHz以上でのノイズ(信号)が抑え込めています。このことはシングルスーパーでのイメージ混信の除去には有効かと思われました。
 
【まとめ】
RD-9810とRD9830の特性比較を行った。
RD-9810は利得はなく近接周波数の選択度は高くないもののイメージ混信の除去には有効と思われる。
RD-9830は高い利得と高い選択度があるが、強入力信号を扱う際には相互変調波に注意が必要である。
 
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