2013年2月11日月曜日

51S-1用セラミックフィルタの作成②


昨日のブログでは512kHzのセラロックを使用した中心周波数約503kHzのラダーフィルタの作成について報告いたしました。その中で問題となっていた直列共振周波数が497-498kHzとなるセラロックの入手ですが、実はネット通販で見積もりを依頼するところまでこぎつけましたが最小販売単位は500個(@60円:総額三万円也!)とのこと…結局予算の関係で購入は断念しました。

さらに出物はないかとウェブ上でいろいろと検索を進めていきましたが、手頃な価格で入手できるところは見つかりません。もう駄目かなぁとあきらめかけていたところにアイコムの「エレクトロニクス工作」


というページに出くわしたのでありました。

そのページですが、何とセラロックを分解して中の発振子(セラミック)を取り出し、これを削って目的とする周波数を作るというかなりマニアックな内容が掲載されているではありませんか。この方法をマスター出来れば自分で好きな周波数の発振子を自由に作成できることになり、今後のフィルタ作成の選択肢がかなり広がることになります。

となると目的の周波数ちょうどでなくともいいわけで、なるべく近いもの(ただし高い周波数のものはダメ)でかつ安いものをと探していくと480kHzのセラロックが手頃な価格で入手可能でしたので早速これを購入しました(トップの写真:120個@30円)。





共振子(セラミック)を加工するにはまずセラロックを分解しなければなりません。分解する方法ですが、これはアイコムのページに詳しく記載されています。①ケースの上部1/3を金ノコで切る方法(上図:ソケットとして使用する)

 

 

②ケースの下部の樹脂を手回しドリルではがし開封する方法(上の図)の二つがあります。①の方法でひとつを分解し、これをその後加工した共振子の測定ソケットとして使用します。大量に分解するには②の方法が便利で、開封し削って調整した発振子を元通りに納めてそのままフィルタ作成に使用できます。

セラミック発振子の動作原理は教科書に譲るとして、問題は共振子をどのように加工するとどの程度の周波数が得られるのか、再現性はどうなのかといったことです。当然共振子を小さくすれば共振周波数が高くなりますが、アイコムの記事では元の周波数から約4-5%程度は高い周波数に調整できると結論づけておられました。があまり削りすぎると副共振が生じ発振子としての本来の性能が維持できなくなるとも記載されていました。



今回入手した480kHzのセラロックの直列共振周波数はおよそ466kHzです。これを497kHzまで引き上げようというもので率にして6.7%にあたります。
まずは前述のページを参考にして四角形の共振子の四隅を削っていくことにしました。オリジナルではニッパーで削る方法が示されていますが、我が家のニッパーは切れが悪いのか共振子がすぐに割れてしまいます。仕方がないので紙やすりで削ることにしました。
確かに削れば削るほど共振周波数は上がっていきます。





ただし目的の497kHzに達するころにはいくつか副共振ができて特性的に怪しくなってしまいました(上図:副共振の1例)。四隅を削っていく方法では削った後の共振子の形状を対称に保つことが困難で、このため副共振が生じているものと考えられます。



そこで削る方法を変えました。四角形の平行する2辺を削り、長方形にしていくというものです。削った断面を確認しながら作業ができ、途中の測定で副共振が生じても対称性に注意して補正していけば副共振も目立たなくあるいは消すこともできます。また0.1kHz程度の共振周波数の微調整も可能です(セラミック共振子、左から加工前、四隅削り、対面二辺削り)。


 

今回は試しに10個を削ってみました。400番の紙やすりに発振子を接触させ約3cm往復させ削っていきます。2辺をそれぞれ30-40回削ると直列共振周波数が485-495kHz程度となります。そこからは2-3回削っては周波数を測定し497.5kHzに近付けていきました。10個のうち8個が497.5kHz±0.2kHzにおさまりました(上の図は加工後の特性図の1例)。2個は周波数が上がりすぎでボツ(力が入りすぎたかなぁ?)。ちなみにソケットを用いて測定した共振周波数と元のケースに収めて測定した値は同じで違いはありませんでした。

 

早速加工の終わったセラロックを使用して7素子のラダー型セラミックフィルタを作成しました。fs(直列共振周波数)が497.5kHz、⊿fが16-17kHzで端子間容量が240-260pFで結合容量2000pF、終端容量1000pFとなり、通過帯域は約5.5kHz、終端インピーダンスが約300Ωとなります。


 

上には特性図を示します。通過帯域がフラットではなく高いほうが欠けたような形になりましたが欠けた所に目をつむれば中心周波数はほぼ500kHzとなり通過帯域もおよそ5.5kHzといったところです。減衰帯域は12kHz(-60dB)程度でコリンズのAM用メカフィルと比べてもなんら遜色はありません(トップが欠けていることを除けば・・・)。

うーん、それなりの特性のものは出来ることがわかりましたがなかなか簡単にはカンペキな物はできないものです。今度は欠けたトップをどうするか、また頭の痛い問題が出てきました・・・

続き→51S-1用セラミックフィルタの作成③
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