2013年2月10日日曜日

51S-1用セラミックフィルタの作成①


昨日も書きましたが51S-1では、デフォルトのAMモードでの受信の場合はLCフィルターがその選択度を決定していています。混雑した短波帯では隣接局のビートが気になることがよくあり、ノッチ(Rejection Tuning)でビートをキャンセルできますが両サイドから混信がある場合はどうしても片方のビートが残り、耳に付くことに何度が出くわしました。

最終的にはコリンズのAM用メカニカルフィルタを装着したのですが、このフィルタが入手できない場合、51S-1の中間周波数は500kHzと特殊なため、どうしても帯域を制限したいとなるとフィルタを自作するしか道はないようです。

CQ誌2006年1月号から6月号にかけてJA9ATT/1加藤高広氏が「簡単に作れるラダー型クリスタル・フィルタ」を連載され、そのなかでセラミック発振子を用いたセラミックフィルタの作成法を掲載しておられます。

Chon型のLSBラダー型フィルタを作成するためには3つの情報があれば簡単に設計できるとのこと、その3つの情報とは
①     直列共振周波数fs
②     並列共振周波数fp
③     端子間容量Cs
このうち①②を測定するにはトラッキング・ジェネレーターとスペクトラム・アナライザーが必要となります。高周波発振機、周波数カウンター、高周波電圧計、オシロスコープなどでも測定は可能ですが手持ちにありません。

ところで先日、PERSEUSに意外な機能があることに気が付きました。操作画面上に”Mhold”というボタンがあります。いつもは使うことがなかったのですが、何気なくこのボタンを押してみるとシグナルの最高値が表示されます。これはひょっとしてスペクロルアナライザーの代わりになるのではと、手持ちにあったナショナルのデジタル周波数カウンター・マーカーのRD-9600とPERSEUSを使ってセラロックの周波数特性を測定してみることにしました。なるべく500kHZに近い周波数で入手可能な512kHzのセラロックを40個購入してやってみることにしました。

 
デジタルマーカーの出力をそのままPERSEUSに接続し計測したところRD-9600の出力レベルはセラロックの計測を予定している範囲でほぼ一定であることがわかりました。


次にマーカー側とPERSEUS側をそれぞれ50Ωの抵抗で終端し、この間にセラロックを接続、デジタルマーカーの周波数を変化させていくと・・・、いとも簡単にセラロックの周波数特性図が出来上がりました。
 
出来上がった曲線のピークが直列共振周波数fsで500.681kHzとなり、谷が並列共振周波数fpの518.991kHzとなります。このセラロックの場合⊿fは18.31kHzで端子間容量はデジタルテスターで静電容量を測定し246pF。本来なら端子間容量からケース部分のストレー容量を差し引いた値をCsとして用いるべきですが、データシートがないためストレー容量はわからず計測値をそのまま使用しました。
以上の計測を40個のセラロックについて行い一覧表を作成し、特性のそろったものを選別して5素子と8素子のフィルタを作成しました。上の図には5素子のセラミックフィルタの回路図を掲載します。

通過帯域幅Bw、結合容量Cc、終端容量Ct、終端インピーダンスRtとするとそれぞれの関係は以下の式で表せます。
直列・並列共振周波数差: ⊿f = fp – fs
終端容量: Ct = 2・Cs ( ⊿f / Bw ) -1
結合容量: Cc = 2・Ct
終端インピーダンス: Rt = 1 / 2πfsCt

通過帯域幅Bwを約6kHzに設定すると結合容量Ccは約2000pF、終端容量Ctは1000pFとなり1000pFのキャパシターを多量(100個)に購入し、2000pFは2個並列で使用しました。キャパシターもデジタルテスターで静電容量を測定して容量が±0.5%のものを使用しています。終端インピーダンスは約300Ωとなりました。

 
ユニバーサル基盤にそれぞれのパーツを組んでみました。上の写真に出来上がった5素子と8素子のセラミックフィルターを示します。それぞれの特性を測定したものが以下の図ですです。LSB型ラダーフィルタの特徴として通過帯域の下側(周波数の低いほう)で裾をひくのですが(素子数が少ないと顕著に現われる)、8素子のものでは比較的対称性もよく帯域外減衰も80dBは確保できているようです。市販のセラミックフィルタと遜色ない特性です。

 5素子ラダー型セラミックフィルター特性図
8素子ラダー型セラミックフィルター特性図
ところが出来上がったフィルタを計測して(する前からわかってはいたんですが)大きな問題にぶつかりました。その問題とは中心周波数が500kHzちょうどにはならないことなのです。フィルタ設計上通過帯域の下限の周波数がちょうどセラロックの直列共振周波数fs(およそ500kHz)となるため、通過帯域を6kHzとして設計した今回のフィルタの中心周波数は約503kHzなっているのです。中心周波数500kHzのフィルタを作成するには直列共振周波数fsが497kHzとなるようなセラロックを使用しなければなりません。

セラミック発振子はムラタや京セラからいろいろな種類、周波数のものが販売されてはいますが、実際に市場に出回り、入手できるものは限られています。また製品に表示されている発振周波数も直列共振周波数ではありません。

今回PERSEUSの意外な使い道に小さな感動を覚え、作り始めたフィルタですが、51S-1のAM用に使えるものを作成するにはまだまだ解決しなければならない問題が山積みのようです。

続き→51S-1用セラミックフィルタの作成②
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