2013年3月2日土曜日

P社とS社の6DC6①

図1

今回は真空管のお話です。このブログにお立ち寄りの方々には良くご存知のものかと思います。今から1世紀から四半世紀前までの電気電子回路の中核を担ったデバイスです。通信機の分野、特に受信機の高周波増幅に使用されていた6DC6という真空管について書いていこうと思います。

以前JA2AGP矢澤氏の掲示板で管球式受信機の真空管の差し替えについて興味深い話が語られているのを見つけました。
その要点は(リンク
・コリンズの6C4の使用位置では6100は同等ではない(SP600も同)。
・フィリップスの5749はシルバニアの5749と差し替え比較してみると良い。
・フィリップスの6DC6とシルバニアの6DC6と差し替えてみると良い。
・6BE6、6BA7は数本差し替えてみて選ぶと良い。
の4点です。

このところTVでよく「都市伝説」なる言葉が使われていますが、上記を「真空管の都市伝説」と名付けて検討してみようというのが今回のお題であります。特に51S-1のフロントに使用されている高周波増幅管6DC6についての「フィリップスの6DC6とシルバニアの6DC6と差し替えてみると良い」を検証してみることにしました。

図1にPhilips ECG(Electronic Components Group)の6DC6とSylvaniaの6DC6を示します。外見上は両者ほとんど変わりありません。Philips ECGの球は手持ちのストック2本と以前紹介したOMさんから51S-1と同時にお譲りいただいた2本の合計4本。Sylvania製6DC6は秋葉原のアンディクス・オーディオから購入した6本です。

このうちそれぞれのメーカーの球3本を51S-1に差し替えて聞き比べてみました。51S-1を十分にウォームアップした後、19時すぎの7325kHzの中国国際放送にダイアルをあわせ、PhilipsとSylvaniaの6DC6計6本を交互に差し替えて数分間、Sメーターの振れ、受信状態を比較しました(メーターの0点はすべての球でほとんど移動なく較正は行いませんでした)。

図2 Philips ECG                       図3 Sylvania
結果はPhilipsの6DC6の3本は、Sylvaniaの6DC6の3本と比較してSメーター読みで約20dB振れが悪く(図2 Philips ECG、図3 Sylvania;代表例;振れのピークでとりました)、受信状態を比べてもPhilipsの球で外来ノイズがあまり目立たない印象、言い換えれば若干感度が低いような印象でありました。また各々のメーカー3本の真空管間では大きな違いはありませんでした。

また手持ちにあった1974年製のRCAの6DC6を同じく試してみましたがやはりPhilipsの製品より20dBほどメーターがよく振れる結果が得られました。ただしここまでの結果はあくまで放送波を受信してのもので、フェ-ディングによりその時々信号強度にばらつきがあって違いが出ているのかもしれません。厳密な感度試験とは異なります。

それでも前述のJA2AGP矢澤氏の掲示板で「真空管メーカーが異なる新品で、真空管試験器では同等の結果であっても、実装位置で交換すると20DB以上の利得の相違を経験したことがあります。」との書き込みや、他のWebサイトでの「P社の6DC6は利得が低くストックに回してしまうことが多い。」といった記載などが散見されることから、どうやらこの都市伝説にはPhilips ECGの6DC6の性能がよくないということが語られているようです。

ではどうしてこのような違いが出てくるのか?それはまたの機会に。
続きアップしました

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